苦痛な乗り物のヨロコビ(タイーラオス:メコン川スピボー旅)

アジア

タイ北部チェンライからチェンセン、チェンコンを経由して、ラオス北部のルアンプラバンに入った。
直行できる空の便はなく、「どう行くのがよいか」と地図を見てみると、タイ・ミャンマー・ラオスの3カ国国境付近とルアンプラバンはメコン川でうまい具合につながっているではないか。

メコン川の船旅ルートGoogleMap

タイとの国境にあるラオスのファイサーイ船着場からライスの古都ルアンプラバンまでの船(ボート)のルートが水色の線です。濃い青の線は自動車でのルート例。

「川下りの船旅も良いなぁ」と軽い気持ちでこのルートを選んだのだが……。

これが、なかなかに悲劇だった。

タイ側チェンコンの川辺からメコン川を渡って対岸のファイサイに到着。ラオスに入国だ。
そこからルアンプラバン行きの船が出ている乗り場に向かった。

チケット売り場のオヤジさんは「スピードボートで3時間くらいだ」という。
ちなみにスローボートもあって、こちらは2日間かかるという。
時間もないので当然スピードボートを選択。
チケット代は1人1300バーツ。

スピードボートは、大型改造エンジンにスクリューの付いた長いパイプを直結した、いわゆるロングテール(尾長)ボートだ。
ただ、バンコクのチャオプラヤ川で見かけるような大きさでなく、幅1メートル余りの狭さである。
その舳先(へさき)に荷物を積んで、中央に6人が乗るのだが、座席がもの凄く狭いのである。

しかも2人分をご丁寧に板で囲ってある。
縦50センチ、横1メートルの木箱の中に、大人2人が並んで乗る構造だ。

当然、脚を伸ばす余地はないので、膝を抱えて胸に付けて座る。
体育座りの超窮屈型だ。
「これで3時間か…」とうなだれていると、先客のフィンランド人とエストニア人のカップルが「え、6時間はかかるそうよ」と青い顔をしている。
チケット売り場のオヤジさんはウソをついて客を乗せようとしたのか、それともラオス人的な優しさなのか。。。
とにかくオヤジさん以外の誰に聞いても6時間くらいだという。

覚悟を決めて乗り込む。船が岸を離れた。
改造エンジンの小刻みだが確実に体力を奪う激烈な振動。
加えて、時折出くわす急流を乗り越えるとき船が大きくジャンプするので、体育座りを続けるお尻はあっという間に感覚を失う。
前の年に椎間板ヘルニアの手術をした腰がキリキリと痛み警告を発する。

だが、船は時速80キロ以上の猛スピードで川面を滑走するので立ち上がることもできない。
スピード対策でフルフェイスヘルメットをかぶっているので息苦しいうえに暑苦しい。

途中に船で暮らす家族がやっている船上レストラン(ちなみに水道はない)で30分のランチ休憩があっただけで、本当に6時間かけてルアンプラバンに着いた。
降りた時、木箱に入ったまま激しく揺さぶられ、あちこち傷んだメロンの気分とはこういうものかも、と思った。

 

こういう苦しい乗り物は、後々まで旅を思い出す「材料」になる。

1991年に中国・上海からトルコのイスタンブールまで陸路で旅をした時も、パキスタンの山中をトヨタ「ハイエース」に16人乗って15時間移動したことがあった。
あまりの狭さに、後ろに座った少年が車酔いでゲロゲロになった。
仕方なく、ビタミン剤を渡して、「これはテクノロジー先進国(当時)、日本で最高級の酔い止めだ」と暗示をかけて飲ませたら……。
見事に止まった! これも良い思い出だ。

今後、何度こうした壮絶系の乗り物に出会えるか。
若いころのような体力と無謀さがなくなったので、いまさら乗りこなすのに自信はない。
それでも乗り物の苦痛に耐えるのは旅の醍醐味だと思う。豊かになると失われるものもあるからだ。

「いやぁ酷かった」と苦痛自慢をするほどトシをとったということなのか、それともただのマゾなのか。
ただ、旅する気合いだけは失いたくないと改めて思った船旅だった。

メコン川から見た夕陽(フリー画像です)

 

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